【風営法改正】「何が変わる?どこに注意?」行政書士が新旧比較で徹底解説!

【風営法改正】「何が変わる?どこに注意?」行政書士が新旧比較で徹底解説!

令和7年風営法改正|許可申請はどう変わる?

風営法改正で業界に激震!許可基準と禁止行為の大幅変更

令和7年に成立した風俗営業法(風営法)の改正は、キャバクラやホストクラブなどの接待飲食営業、パチンコ店、ゲームセンターなどの遊技場営業、そして性風俗関連特殊営業を営む事業者にとって、非常に重要な変更をもたらします。
行政書士として今回の改正の要点と実務への影響を徹底解説します。

1. 風営法改正の背景と概要

なぜ今、改正が必要だったのか?

近年、特にホストクラブなどの接待飲食営業において、顧客が高額な借金を背負うトラブルが社会問題化しています。また、悪質な営業手法や風営法の規制を潜脱するための巧妙な手口も増加していました。
今回の改正は、これらの問題に対応するために、主に以下の3つの点で規制を強化しています:

  • 不許可事由の追加・拡充:グループ会社などを利用した規制逃れを防止
  • 禁止行為の新設:恋愛感情につけ込んだ営業など悪質な手法を明確に禁止
  • 罰則の強化:違反に対する抑止力を高め、法令順守を徹底

2. 不許可事由の拡大で許可取得が厳格化

【改正前→改正後】密接関係会社も審査対象に

改正ポイント旧法(改正前)新法(改正後)
関連会社の処分歴申請者自身の処分歴のみ審査親会社・子会社など密接な関係を持つ法人の処分歴も審査対象に
支配的影響力役員など形式的関係のみ審査出資・融資など実質的な支配関係も審査対象に
関連会社の処分歴立入検査後の事業承継に関する規定が不十分立入検査後の「合併・分割」による規制逃れも明確に禁止

実務への影響

この改正により、風俗営業の許可申請を行う際には、申請者だけでなく関連会社の状況も重要な審査ポイントとなります。特に注意すべき点は:

  • グループ企業内の一社でも過去5年以内に許可取消処分を受けていると、新規許可が得られない
  • 資金提供者や実質的な経営者が不許可事由に該当する場合、形式上の申請者が適格でも許可されない
  • 行政処分を回避するために別会社に事業を移すような行為が明確に禁止される

3. 接待飲食営業に新たな禁止行為が追加

【改正前→改正後】客の保護を強化する禁止行為

新設された禁止行為具体例
料金の虚偽・誤認説明の禁止・「飲み放題」と言いながら実際には追加料金が必要
・サービスが無料であるかのように装って高額請求
恋愛感情につけ込んだ困惑営業の禁止・「来店しないと関係が破綻する」と告げる
・「あなたが来ないと私が降格される」と告げる
注文前のサービス提供による困惑営業の禁止・注文していないシャンパンを開けて提供し支払いを要求
・意思表示前にVIP席に案内して高額料金を請求
威迫による支払強制の禁止・脅して料金支払いを要求
・困惑させて契約を強制
違法行為等による金銭取得要求の禁止・借金返済のために性風俗店で働くよう誘導
・アダルト作品出演を強要

実務への影響

接待飲食営業(特にホストクラブやキャバクラ)を営む事業者は、従業員教育の徹底が不可欠となります:

  • 料金体系を明確にし、メニューやホームページに分かりやすく表示
  • 従業員向けマニュアルの改訂と定期的な研修の実施
  • 接客時の録音・録画など、トラブル防止策の導入
  • 客との私的なSNSやLINEでのやり取りに関する社内ルールの設定

4. 罰則強化で違反リスクが大幅増大

【改正前→改正後】厳罰化で抑止力を高める

罰則対象旧法(改正前)新法(改正後)
無許可営業等比較的軽い罰則5年以下の拘禁刑、1千万円以下の罰金、または併科
法人に対する罰金通常の罰金額と同水準最大3億円の罰金刑(無許可営業の場合)
新設禁止行為違反規定なし1年以下の懲役、100万円以下の罰金、または併科

実務への影響

罰則の大幅強化により、違反行為のリスクが経営上無視できないレベルに高まりました:

  • 無許可営業は刑事罰のリスクに加え、法人に対する高額罰金で経営破綻の可能性も
  • コンプライアンス体制の構築が経営上の最重要課題に
  • 従業員の違反行為も法人の責任として問われるため、監督責任が重要に

5. 施行時期と今すぐ準備すべきこと

施行スケジュール

  • 法律の大半は、公布の日から起算して1か月後に施行
  • 不許可事由の追加・拡充などの一部規定は、公布の日から起算して6か月後に施行

今すぐ取り組むべき対策

<経営者・管理者向け>
 社内体制の見直し
  ・コンプライアンス責任者の選任
  ・内部通報制度の整備
  ・定期的な社内監査の実施
 営業方法の点検
  ・料金体系の明確化とメニュー表示の改善
  ・注文システムの明確化と記録
  ・接客マニュアルの見直し
 関連会社構造の整理
  ・グループ企業間の関係性の整理
  ・出資・融資関係の再確認
  ・役員構成の見直し

<従業員向け>
 禁止行為に関する研修
  ・新設された禁止行為の具体例を用いた教育
  ・ロールプレイングによる接客訓練
  ・定期的な確認テストの実施
 顧客とのコミュニケーション管理
  ・過度な恋愛感情を抱かせる言動の禁止
  ・SNSやLINEでの私的なやり取りのルール化
  ・問題のある客への対応方法の共有

まとめ:専門家への相談が不可欠

今回の風営法改正は、特に接待を伴う飲食店営業(いわゆるキャバクラ、ホストクラブなど)に大きな影響をもたらします。不許可事由の拡大、新たな禁止行為の導入、罰則強化によって、より厳格なコンプライアンス体制が求められるようになります。
風営法は元々複雑な法律ですが、今回の改正によってさらに専門的な知識が必要となりました。許可申請や更新手続き、営業方法の見直しなど、専門家である行政書士に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して営業を継続することができます。

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この記事を書いた人

司法書士・行政書士 和田正俊事務所 代表和田 正俊(Wada Masatoshi)

  • 滋賀県司法書士会所属 登録番号 滋賀第441号
  • 簡裁訴訟代理関係業務 認定番号 第1112169号
  • 滋賀県行政書士会所属
    登録番号 第13251836号会員番号 第1220号
  • 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート滋賀支部所属
    会員番号 第6509213号
    後見人候補者名簿 及び 後見監督人候補者名簿 搭載
  • 法テラス契約司法書士
  • 近畿司法書士会連合会災害相談員

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