障害者の意思決定支援とは、障害者本人が自分の人生に関する選択をする際に、必要な情報やアドバイス、コミュニケーションの方法などを提供することです。しかし、この支援はなぜ「難しい」のでしょうか?
一つの理由は、話せない障害者に対する偏見や無理解です。話せなければ言葉がないと思ってしまう人が多く、言葉がなければ意思がないと思ってしまう人もいます。しかし、話せないからといって言葉がないわけではありません。話せない障害者も、身体や表情、目線、ジェスチャーなどで自分の意思や感情を表現しています。支援者は、それらのサインを見逃さずに、本人の意思や心からの希望を探求する必要があります。
もう一つの理由は、障害者の能力や経験に対する過小評価です。障害や過去の「失敗」等を理由に、障害者は自分で意思を決める能力がないと判断してしまう人もいます。しかし、障害者も普通の人と同じように、自分の可能性を信じて挑戦したり、失敗から学んだりしています。支援者は、本人の能力や経験を認めて尊重し、本人が自信を持って意思決定できるようにサポートする必要があります。
さらにもう一つの理由は、支援者側の問題です。支援者は、本人の安全や利益を保障したいという気持ちから、リスク回避やパターナリズムに陥りやすいです。リスク回避とは、本人の選択が危険だと感じた場合に、その選択を否定したり制限したりすることです。パターナリズムとは、本人の選択が不合理だと感じた場合に、代わりに自分が正しいと思う選択をしたり強制したりすることです。しかし、これらの行為は、本人の自己決定権や尊厳を侵害することになります。支援者は、本人の選択を尊重し、その選択に伴うリスクや責任を共有しながら寄り添う必要があります。
以上のように、障害者の意思決定支援は「難しい」こともありますが、「できない」ことではありません。重要なことは、意思決定支援(支援付き意思決定)と代理代行決定の違いを意識することです。
意思決定支援(支援付き意思決定)とは、本人が意思決定主体であることを前提として、本人が自分で表出した意思や心からの希望に沿って支援することです。意思決定全体のプロセスにおいて、本人の声を聞き、本人の立場に立ち、本人の選択を尊重します。
代理代行決定とは、本人が意思決定主体でないことを前提として、第三者が本人にとっての最善の利益を追求することです。意思決定全体のプロセスにおいて、本人の声を無視し、第三者の立場に立ち、第三者の選択を強制します。
意思決定支援(支援付き意思決定)は、障害者の自己決定権や尊厳を保障することにつながります。代理代行決定は、障害者の自己決定権や尊厳を侵害することにつながります。支援者は、この違いを常に意識し、障害者の意思決定支援に取り組む必要があります。
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