信託で実現する相続財産の一括管理 - 価値を守り争いを防ぐ賢い遺産承継法
「相続で財産が分散して価値が下がってしまう」「子どもたちが遺産を巡って争うのは避けたい」—このような心配を抱える方は少なくありません。特に不動産や事業用資産など、分割すると価値が大きく損なわれる財産の場合、相続による分散は大きな問題となります。本記事では、信託という仕組みを活用して財産を一括管理し、相続人間の公平性を保ちながら資産価値を守る方法について解説します。
本記事のポイント:
- 相続による財産分散の問題点と従来の対策の限界
- 信託を活用した財産一括管理の仕組みと利点
- 相続人間の公平性を確保しながら財産価値を守る方法
- 信託型遺言の具体的な活用例と設計ポイント
- 当事務所による信託・遺言サポートの内容
従来の一括管理の課題と信託導入の背景
相続財産の中に高価な土地や分散管理すると効果が薄れる財産がある場合、「遺産の一括管理」が重要になることがあります。しかし従来は、相続によって財産が細分化・分割されることで価値や運用効率が下がってしまうことが課題でした。
財産分散による主な問題点
- 資産価値の低下:特に不動産は分割によって価値が大きく下がることがある
- 運用効率の悪化:まとまった資産としての運用メリットが失われる
- 意思決定の困難:共有状態になると全員の合意が必要になり、機動的な判断ができない
- 管理コストの増加:分散した財産管理には余計な手間とコストがかかる
- 相続人間の争い:「誰がどの部分を相続するか」をめぐって争いが生じやすい
従来の対応策とその限界
財産を特定の相続人に引き継がせる方法や法人化して管理する方法もありましたが、不公平との感情や高いコスト・手続きの煩雑さがネックとなることが多く、「争族」化の原因になることも少なくありませんでした。
- 特定相続人への集中的相続:他の相続人の遺留分侵害や不公平感による争いのリスク
- 資産管理会社の設立:設立・維持コストが高く、小規模資産には不向き
- 遺産分割協議による工夫:相続人全員の合意が必要で、争いがある場合は実現困難

事例:アパート経営の相続問題
A氏は5棟のアパートを所有・経営していました。相続人は3人の子どもたちです。通常の相続では各アパートを分割相続することになりますが、これには以下の問題が生じます:
- 各アパートの価値や収益性が異なり、公平な分割が難しい
- まとめて管理していた効率性が失われる(スケールメリットの喪失)
- アパート経営のノウハウがない子どもは適切に管理できない
- 「良い物件だけ欲しい」という争いが起きる可能性
このような場合、信託を活用した一括管理が効果的な解決策となります。
信託契約の有効活用 - 一括管理と公平分配の両立
現在では、信託契約を使って課題を解決する事例が増えています。信託とは、財産の所有者(委託者)が信頼できる人(受託者)に財産を移転し、一定の目的(この場合は効率的な資産管理)のために管理・処分してもらう仕組みです。
信託を活用した一括管理の基本的な仕組み
例えば一括管理したい財産群を「信託財産」とし、受益者を全ての相続人に指定して信託契約を締結することで、それぞれの相続人は信託財産全体から生じた利益を公平に受け取ることができます。
信託終了までは財産の分散を防いで最大限の活用や運用が可能になり、終了時にはまとめて相続人に帰属させることも可能です。終了後に特定の相続人に帰属させた場合でも、すでに利益配分を受けていれば他の相続人との間で遺留分(法律上の最低相続分)を巡るトラブルが起きにくくなります。
このように信託契約は、公平性を保ち相続が"争族"化するのを防ぎつつ、財産の減少や価値毀損を防ぐ有力なツールとなります。

信託による一括管理のメリット
資産価値の維持・向上
分割されずに一体管理されることで、資産価値の低下を防ぎ、むしろ効率的な運用で価値向上が期待できます。
公平な利益分配
財産自体は分割せず、そこから生じる利益を各相続人の相続分に応じて分配することができます。
専門的な管理の実現
経営や不動産管理のノウハウを持つ相続人や専門家を受託者とすることで、財産の効率的な管理・運用が可能になります。
遺留分問題の緩和
信託から定期的に収益を分配することで、最終的な財産帰属に関する遺留分侵害の問題を軽減できます。
信託の基本的な仕組み:
- 委託者:財産を信託する人(遺言信託の場合は遺言者)
- 受託者:信託財産を管理・運用する人(信頼できる相続人や専門家)
- 受益者:信託から利益を受ける人(全相続人または特定の相続人)
- 信託財産:信託の対象となる財産(不動産、事業用資産など)
- 信託目的:信託を設定する目的(一括管理による価値維持など)
これらの要素を適切に組み合わせることで、相続財産の一括管理と公平な分配を実現できます。
具体的な信託設計例 - 財産一括管理の実践
財産の一括管理を実現するための信託設計の具体例を見てみましょう。
信託設計の主要ポイント:
- 適切な受託者選定:信頼でき、管理能力のある人物または専門家を選ぶ
- 公平な受益権設計:各相続人の法定相続分を考慮した受益権割合の設定
- 明確な運営ルール:利益分配方法や重要決定の手続きを明確化
- 適正な報酬設定:受託者の努力に見合った報酬を確保
- チェック機能の導入:信託管理人や監督人の設置による健全性確保
- 柔軟な終了規定:信託終了時や途中解約時の取扱いを明確化
これらのポイントを押さえた設計により、財産の一括管理と相続人間の公平性を両立させることができます。
当事務所でお手伝いできること
財産の一括管理を実現するための信託設計は、専門的な知識と経験が必要です。当事務所では、以下のような包括的なサポートを提供しています。
公正証書遺言の作成支援
信託を設定する遺言を公正証書形式で作成するためのサポートを提供します。内容の法的妥当性の確認から公証役場との調整まで、一貫してお手伝いします。
信託契約の起案・内容設計
ご家族の状況や財産の特性に合わせた最適な信託スキームを設計し、法的に有効な信託契約書を作成します。受益権の設計から運営ルールまで、細部にわたって調整します。
信託契約の締結サポート
信託契約の締結に必要な手続きをサポートします。関係者への説明や必要書類の準備など、スムーズな契約締結をお手伝いします。
信託の受託者・管理人・監督人への就任
ご希望に応じて、当事務所が信託の受託者、管理人、監督人などの役割を担うことも可能です。専門的知識を活かした適切な信託管理を提供します。
その他ご希望に合わせた総合的な信託・遺言のサポート
一括管理だけでなく、事業承継や福祉型信託など、様々な目的に応じた信託設計もサポートします。お客様のニーズに合わせた総合的なアドバイスを提供します。
遺産管理や承継の効率化、争族防止をお考えの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ - 信託で実現する財産の保全と公平な相続
相続財産の散逸を防ぎ、一括管理することは、資産価値の維持・向上だけでなく、相続人間の争いを防止するためにも重要です。従来の方法では実現が難しかった「財産の一括管理」と「相続人間の公平性確保」という二つの目標を、信託という仕組みを活用することで両立させることが可能になります。
特に不動産や事業用資産など、分割すると価値が大きく損なわれる財産の場合、信託による一括管理は非常に有効な選択肢となります。信託契約の柔軟性を活かして、財産の特性や家族の状況に合わせたオーダーメイドの設計ができる点も大きなメリットです。
当事務所では、お客様の状況やご希望に合わせた最適な信託設計から契約締結、運営サポートまでを一貫してお手伝いします。大切な財産を守り、公平な相続を実現するためのご相談を、ぜひお気軽にお寄せください。
司法書士・行政書士和田正俊事務所
住所:〒520-2134 滋賀県大津市瀬田5丁目33番4号
電話番号:077-574-7772
営業時間:9:00~17:00
定休日:日・土・祝
信託を活用した財産管理に関するご相談は、お電話またはメールにて「信託相続について相談したい」とお伝えください。初回相談30分は無料です。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別のケースに対する法的アドバイスを構成するものではありません。具体的な信託設計については、当事務所までお問い合わせください。
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