FATF声明に基づく犯罪収益移転防止法の適正履行に関する最新の要請事項

2025年2月21日、FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)が声明を発表し、日本に対して犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、「犯罪収益移転防止法」)の適正な履行を求めました。この声明を受け、日本司法書士会連合会を通じて、各司法書士に適切な対応を促す連絡が行われています。本記事では、この声明の背景や具体的な内容、そして司法書士としてどのように対応すべきかについて詳しく解説します。
FATF声明とその背景
FATFは、マネーロンダリングやテロ資金供与に対抗するための国際的な組織です。2025年2月の声明は、特に高リスク国とされる北朝鮮(DPRK)やイランに対する金融措置に重点を置いています。日本は、これらの国から生じる資金洗浄、テロ資金供与、および拡散金融のリスクを防ぐために、FATFのガイドラインに基づいた厳格な顧客管理を行う必要があります。
警察庁と財務省からの要請
日本国内において、警察庁刑事局組織犯罪対策部長と財務省国際局長から、法務省民事局を通じて司法書士へ「犯罪収益移転防止法」の適正履行について周知するよう要請がありました。主要な要請事項は、取引時における顧客確認義務の徹底に加え、高リスク国との金融取引に対する対抗措置の実施です。
高リスク国への対応策
FATFは、北朝鮮が国際金融システムに与える脅威に対抗するために、以下のような具体的な措置を取る必要があるとしています。
- DPRK系銀行とのコルレス関係を終了すること
- 国内のDPRK系銀行の子会社および支店を閉鎖すること
- 北朝鮮の個人との業務関係および金融取引を制限すること
これらの対抗措置は、日本を含む各国が自国の金融システムを保護するために強化すべきポイントとされています。
司法書士としての対応
日本司法書士会連合会は、今回の声明を受け、会員に対して以下の対応を促しています。
- 顧客確認義務の徹底: 高リスク国の取引には特に注意を払い、顧客の本人確認を厳正に行う。
- 定期的な情報更新: 各国のリスク状況やFATFの最新声明を常に把握し、必要に応じて会員に周知する。
- 取引のモニタリング: 普段の業務においても取引の異常兆候に注意を払い、疑わしい取引があれば適切に対応する。
- 研修の実施: FATFの基準に基づく内部研修を定期的に行い、会員の意識と知識の向上を図る。
今後の展望
FATFの声明を受け、日本は今後も国際的な基準に基づいたマネーロンダリング対策を強化することが求められます。特に司法書士としては、顧客確認義務をはじめとする適正な対応が不可欠です。これにより、クリアな金融環境を維持し、日本の国際的信用を高めることにつながります。
まとめ
FATFの最新声明により、司法書士に求められる役割はますます重要になっています。高リスク国への対抗措置を実施し、真に安全な金融取引環境を保つためには、最新の国際基準を理解し、それに応じた措置を迅速に実行することが必要です。会員一人一人がこの責任を果たすことで、日本の金融市場はより安全で健全なものになるでしょう。
このような体制を整え続けるために必要な情報や疑問は、日本司法書士会連合会または法務省の専門部署に相談することをお勧めします。
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この記事を書いた人

司法書士・行政書士 和田正俊事務所 代表和田 正俊(Wada Masatoshi)
- 滋賀県司法書士会所属 登録番号 滋賀第441号
- 簡裁訴訟代理関係業務 認定番号 第1112169号
- 滋賀県行政書士会所属
登録番号 第13251836号会員番号 第1220号 - 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート滋賀支部所属
会員番号 第6509213号
後見人候補者名簿 及び 後見監督人候補者名簿 搭載 - 法テラス契約司法書士
- 近畿司法書士会連合会災害相談員
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