成年後見制度における診断書等の改定について

成年後見制度における診断書等の改定について

成年後見制度における診断書等の改定 - 利用者本位の支援に向けた新しい取り組み

成年後見制度は、高齢化社会の進展に伴い、認知症や障害を持つ方々の権利を守るために重要な役割を果たしています。この制度の運用を支える診断書や本人情報シートの様式が、2021年12月に改定されました。この記事では、改定の背景や具体的な変更点、そして今後の展望について詳しく解説します。

本記事のポイント:

  • 成年後見制度の診断書と本人情報シートが2021年に改定
  • 改定の主な目的は本人の意思尊重と適切な支援の提供
  • 医師と福祉関係者の連携強化を促進する内容に
  • 自己決定の尊重と残存能力の活用が重視される
  • 今後も実務の動向に応じて継続的な改善が予定

成年後見制度とは?

成年後見制度は、判断能力が不十分な方々を支援するための法律制度です。具体的には、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が低下した方々が、財産管理や日常生活の手続きにおいて不利益を被らないよう、後見人がサポートします。この制度は、本人の意思を尊重しつつ、必要な支援を提供することを目的としています。

成年後見制度には主に以下の3つの類型があります:

  • 後見:判断能力が欠けているのが通常の状態の方
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な方
  • 補助:判断能力が不十分な方

また、将来の判断能力低下に備えて事前に契約しておく「任意後見制度」もあります。

成年後見制度の基本理念

成年後見制度は以下の理念に基づいて運用されています:

  • 自己決定の尊重:本人の意思を最大限に尊重します
  • ノーマライゼーション:障害の有無にかかわらず、地域社会で普通に暮らせる社会を目指します
  • 身上保護の重視:財産管理だけでなく、本人の生活や健康、福祉に配慮します

診断書等の改定の背景

平成31年4月に大きな変更が加えられた後、成年後見制度の運用状況を踏まえ、令和2年に2回の改定が行われました。そして、令和3年10月中旬以降、各家庭裁判所の運用に応じて、診断書や本人情報シートの様式が適宜変更されることとなりました。

この改定の背景には、以下の法制度の変更があります:

成年後見制度利用促進法の施行

平成28年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」により、制度の利用を促進するための法的基盤が整備されました。

利用促進基本計画の閣議決定

平成29年3月に「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定され、制度の運用改善に向けた具体的な計画が示されました。

これらの変更により、診断書の様式が大きく変更され、福祉関係者が本人の家庭的・社会的状況に関する情報を考慮できるようになりました。医療と福祉の連携を強化することで、本人にとってより適切な支援が提供できるようになることが期待されています。

診断書と本人情報シートの改定内容

今回の改定では、医師が作成する診断書と福祉関係者が作成する本人情報シートの書式が見直されました。これにより、以下の点が強化されています。

自己決定の尊重

新しい様式では、本人の意思を最大限に尊重し、可能な限り本人の意向を反映することが重視されています。診断書には本人の意思能力や意思表示の状況をより詳細に記載する項目が追加されました。

残存能力の活用

本人が持つ能力を最大限に活用し、支援が必要な部分を明確にするための項目が強化されました。日常生活における具体的な判断能力を評価する項目が細分化され、より実態に即した支援計画の策定が可能になっています。

ノーマライゼーションの理念

障害の有無にかかわらず、すべての人が地域社会で普通に生活できるようにするという理念が反映されています。本人情報シートには、本人の生活環境や社会参加の状況、地域とのつながりに関する項目が充実しました。

本人情報シートの重要性

本人情報シートは、本人の生活状況や社会的背景、意向などを記載する書類で、主に福祉関係者が作成します。改定により以下の点が強化されました:

  • 本人の意思や希望をより詳細に記載できるようになった
  • 現在の支援状況や今後必要な支援内容について具体的に記載する項目が追加
  • 家族や親族との関係、地域とのつながりに関する情報を充実
  • 本人にとって最適な後見人等の選任に役立つ情報を提供

これらの改善により、医療と福祉の連携が強化され、本人の状況をより総合的に把握した上での後見人選任や支援計画策定が可能となります。

これらの改定は、認知症や障害を持つ方々の各関係団体、医療・福祉に携わる関係団体からの意見を踏まえて行われました。現場の声を反映することで、より実効性の高い制度運用を目指しています。

今後の展望

最高裁判所は、成年後見制度の実務の動向を見ながら、必要に応じて診断書や本人情報シートの様式を修正していくとしています。これにより、制度の利用者がより適切な支援を受けられるよう、継続的な改善が図られる予定です。

特に注目すべき今後の展望としては:

  • 意思決定支援の充実:本人の意思を尊重し、支援する方法についてさらなる改善が期待されています
  • 身上保護(身上監護)の重視:財産管理だけでなく、生活環境や医療・福祉サービスの利用などに関する支援の質の向上
  • 地域連携ネットワークの構築:自治体、医療・福祉機関、法律専門職等の連携強化
  • 後見人等の担い手の多様化:親族後見人、専門職後見人、法人後見など、様々な担い手の活用と支援

これらの取り組みにより、成年後見制度がより利用しやすく、本人の意思を尊重した適切な支援を提供できる制度へと発展していくことが期待されています。

まとめ

成年後見制度における診断書等の改定は、制度の利用者にとって重要な意味を持ちます。本人の権利を守り、適切な支援を提供するために、診断書や本人情報シートの様式が見直されました。今後も、制度の運用状況に応じて、さらなる改善が期待されます。

改定のポイントは以下の通りです:

  • 本人の意思をより尊重する項目の充実
  • 残存能力を最大限に活用するための詳細な評価
  • 医療と福祉の連携強化による総合的な支援
  • ノーマライゼーションの理念に基づく社会参加の促進

成年後見制度についてのご質問やご相談がありましたら、専門家にお問い合わせください。制度の理解を深め、適切なサポートを受けるための第一歩となるでしょう。

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