成年後見制度の基本 あなたの権利を守るために知っておくべきこと
成年後見制度は、高齢者や障害者など判断能力が不十分な方々の権利を守るために設けられた制度です。この制度は、被後見人の生活や財産を管理し、その意思を尊重することを目的としています。この記事では、成年後見制度の特徴や専門職倫理の重要性について詳しく解説します。
成年後見制度の3つのポイント:
- 判断能力が不十分な方の権利と財産を守る制度
- 本人の意思の尊重と自己決定の支援が基本理念
- 法定後見と任意後見の2種類の制度がある
成年後見制度の基本
成年後見制度は、判断能力が不十分な方々が安心して生活できるように支援する制度です。後見人は、被後見人の権利を擁護し、生活や財産の管理を行います。後見人には、被後見人の心身の状態や生活状況に応じた対応が求められ、行政機関や福祉関係者との連携が重要です。
成年後見制度の種類
法定後見制度
すでに判断能力が不十分な状態になった方のための制度で、家庭裁判所が選任した成年後見人等が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で行った不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
任意後見制度
将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公正証書で結んでおく制度です。
成年後見業務の特徴
成年後見業務は、人と直接向き合い、支えることを目的としています。後見人は被後見人の権利を擁護し、生活や財産の管理においてその意思を尊重することが求められます。被後見人の権利を守るために、適切な権利行使の支援、権利侵害の解消と予防が重要です。
権利擁護の視点
- 本人の意思の尊重
- 自己決定権の支援
- 適切な代理権の行使
- 財産管理と身上保護
求められる資質
- 高い倫理観
- 専門的知識と技術
- コミュニケーション能力
- 関係機関との連携力
専門職倫理の必要性
知識の格差を埋める
専門職倫理は、専門職と依頼者の間に存在する知識の格差を埋めるために必要です。依頼者の利益を守るための制度的担保が求められ、専門職は社会正義に反しない範囲で依頼者の権利を擁護する必要があります。
信頼の維持・向上
専門職への信頼を維持・向上させるために、倫理の遵守が求められます。後見人には高い倫理観と専門性が求められ、これにより被後見人の権利が適切に守られます。
専門職にとっての倫理
一般市民としての倫理は、人として守るべき道徳やモラルを指します。一方、職業人としての倫理は、職業技術の習得や品質向上を通じて依頼者の利益を守ることを目的とします。法律専門職の倫理は、通常の職業倫理を超える高い倫理が求められ、社会全体の利益のために尽くすことが求められます。
一般市民としての倫理
人として守るべき道徳やモラル
- 他者への尊重
- 誠実さと正直さ
- 社会的責任
職業人としての倫理
職業技術の習得や品質向上
- 専門性の維持・向上
- 依頼者の利益保護
- 守秘義務の遵守
法律専門職の倫理
高い職業倫理と社会貢献
- 社会正義の実現
- 法の支配の維持
- 弱者の権利擁護
司法書士の基本姿勢と業務規律
成年後見業務において、司法書士は本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮することが求められます。法定後見や任意後見に関する相談では、本人や支援者の意見を聴取し、適切な助言を行う必要があります。後見開始申立書類の作成や任意後見契約の締結においても、本人の権利を擁護し、適切な内容になるよう配慮が必要です。
後見業務における法律上の義務
基本的義務
- 善管注意義務:一般的に要求される注意をもって事務を処理する義務
- 本人の意思尊重義務:可能な限り本人の意思を尊重する
- 身上配慮義務:本人の心身の状態や生活状況に配慮する
財産管理に関する義務
- 財産管理義務:本人の財産を適切に管理する
- 利益相反行為の禁止:後見人と本人の利益が相反する行為を避ける
- 報告義務:家庭裁判所への定期的な報告
権利擁護活動の要素
権利擁護活動は、心(倫理・使命感)、技(知識・行動指針)、体(体力・事務所体制)という三つの要素によって支えられています。行動指針は、成年後見制度の基本理念である「自己決定の尊重」、「現有能力の活用」、「ノーマライゼーション」を自覚し、本人の最善の利益を図ることを目的としています。
本人との関わり
本人の性格や生活歴を理解し、定期的に面会して意思や希望を尊重することが求められます。本人の意思決定を支援し、重大な不利益が生じる場合は説明を行い、本人の利益に適う決定を支援します。
代理権の行使
- 本人の意思決定を促し、本人の意向に沿った決定を行う
- 権利や行動の自由を制約しない方法を選択する
- 同意権は事前に行使し、取消権はやむを得ない場合に限定する
- 権限行使前に本人に説明し、理解を得るよう努める
本人の生活への配慮
生活支援の原則
- 本人の安定した生活を支援する
- 社会資源を活用し、適切なサービスを導入する
- 財産を生活の質向上に活かす
- 本人のこれまでの生活スタイルを尊重する
事務の姿勢
- 公正かつ誠実な後見事務を心がける
- 利益相反に注意し、必要に応じて特別代理人を選任する
- 権限を逸脱しないよう注意する
- 適切な記録を保持し、透明性を確保する
法定後見申立や任意後見契約締結にあたって
制度の仕組みを説明し、本人の状態に合った申立てを行い、信頼関係を構築します。成年後見制度は、被後見人の権利を守り、安心して生活できる環境を提供するための重要な制度です。後見人や司法書士は、高い倫理観と専門性を持って業務を遂行し、被後見人の最善の利益を図ることが求められます。
後見申立て時の配慮事項
- 本人の現在の判断能力を適切に評価する
- 本人に制度の内容をわかりやすく説明する
- 本人の希望する後見人候補者を尊重する
- 本人の財産状況を正確に把握する
- 本人のプライバシーに配慮する
- 親族間の調整に配慮する
まとめ
成年後見制度は、判断能力が不十分な方々の権利を守るために不可欠な制度です。後見人や司法書士は、被後見人の意思を尊重し、生活や財産の管理を行います。専門職倫理の遵守は、依頼者の利益を守り、社会全体の信頼を維持するために重要です。成年後見制度を理解し、適切に活用することで、被後見人の生活の質を向上させることができます。
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