実質的支配者の認定方法が変更!株式会社設立時の定款認証の新たなポイント
株式会社を設立する際、定款認証は避けて通れない重要なプロセスです。2023年の法改正により、実質的支配者の認定方法に大きな変更が加えられ、定款認証の手続きにも影響を与えています。本記事では、この変更の詳細と、株式会社設立時の定款認証において押さえるべきポイントを解説します。
実質的支配者とは?定義と重要性
実質的支配者(Beneficial Owner)とは、会社の経営に実質的な支配力を持つ自然人のことを指します。具体的には、以下のいずれかに該当する個人が実質的支配者として認定されます:
- 議決権の25%超を直接または間接的に保有する個人
- 出資、融資、取引その他の関係を通じて会社の事業活動に支配的影響力を有する個人
- 会社の事業活動を実質的に支配する地位にある個人(代表取締役など)
実質的支配者の特定と確認は、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止、さらには租税回避対策の観点から国際的に重要視されています。日本でもマネロン・テロ資金供与対策の国際基準である「FATF勧告」に基づき、法整備が進められてきました。
実質的支配者の認定方法:何が変わったのか?
従来の認定方法
従来の認定方法では、株主構成や役員情報から形式的に実質的支配者を特定することが一般的でした。多くの場合、株主名簿上の大株主や登記上の代表取締役を実質的支配者として申告することで足りていました。
新たな認定方法のポイント
2023年の改正により、実質的支配者の認定方法はより実質的かつ厳格なものとなりました。主な変更点は以下の通りです:
- 支配構造の段階的確認:直接的な株主だけでなく、間接保有も含めた支配構造を段階的に確認する必要があります。
- 実質支配力の重視:形式的な株式保有率だけでなく、実質的な支配力(取引関係や融資関係など)も考慮されるようになりました。
- 確認方法の厳格化:本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)による厳格な本人確認が求められます。
- 申告内容の証明:実質的支配者申告書に加えて、その内容を裏付ける証拠書類(株主名簿、定款、議事録など)の提出が必要になりました。
認定方法の具体的なフロー
新しい認定方法では、以下のようなステップで実質的支配者を特定します:
- 第一段階:議決権の25%超を直接または間接的に保有する自然人を特定
- 第二段階:第一段階で該当者がいない場合、出資・融資・取引関係等を通じて会社に支配的影響力を有する自然人を特定
- 第三段階:第一・第二段階で該当者がいない場合、会社の事業活動を支配する地位にある自然人(通常は代表取締役等)を特定
法改正の背景:国際的なマネロン対策の強化
この法改正の背景には、国際的なマネーロンダリング対策の強化があります。金融活動作業部会(FATF)による第4次対日相互審査(2019年)において、日本のマネロン対策には改善すべき点が多いと指摘されました。
特に指摘されたのは、以下の点です:
- 実質的支配者の透明性確保の不足
- 法人・信託の悪用防止措置の不十分さ
- 金融機関等による顧客管理措置の実効性の不足
これらの指摘に対応するため、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)が改正され、実質的支配者情報の把握・確認が強化されることとなりました。この流れを受け、会社設立時の定款認証においても、実質的支配者の確認手続きが厳格化されています。
定款認証手続きの具体的ポイント
1. 定款の内容確認と作成のポイント
定款は会社の基本規則を定める重要な文書です。特に以下の点に注意して作成します:
- 目的:具体的かつ明確に事業内容を記載(将来の事業展開も考慮)
- 商号:他社と区別できる独自性のある名称(同一住所での同一・類似商号は避ける)
- 本店所在地:最低でも市区町村まで記載(町名以下は登記申請時に決定可能)
- 機関設計:取締役会の有無、監査役の設置など会社の統治機構
- 株式譲渡制限:非公開会社の場合は株式譲渡制限条項が一般的
2. 公証人による認証手続きの流れ
定款認証は以下の流れで行われます:
- 事前予約:管轄の公証役場に電話で予約を入れる
- 必要書類の準備:
- 定款原本(発起人全員が署名・実印押印したもの)
- 印鑑証明書(発起人全員分、3ヶ月以内のもの)
- 会社の本店所在地を証明する書類(賃貸借契約書のコピーなど)
- 定款認証手数料(5万円+収入印紙代4万円)
- 新たに必要となった実質的支配者に関する書類
- 公証役場での手続き:公証人による面前での確認と署名
- 電子定款の場合:電子証明書を用いた電子署名と電子定款の提出
3. 実質的支配者情報の提供方法
法改正により、公証人による定款認証時に以下の実質的支配者関連書類の提出が必要となりました:
- 実質的支配者申告書:公証役場所定の様式に従い、実質的支配者の情報を記載
- 実質的支配者の本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどのコピー
- 支配関係を示す資料:株主構成図、出資比率表、グループ企業関係図など
- 申告内容を裏付ける書類:株主名簿、株式引受証など
外国人が実質的支配者である場合や、複雑な株主構造を持つ場合は、追加書類が求められることがあります。
実質的支配者認定における注意点と対応策
1. 間接保有の確認方法
実質的支配者の特定において、間接保有の確認が重要になります。例えば、A社の株式をB社が30%保有し、そのB社の株式をC氏が100%保有している場合、C氏はA社の間接的な実質的支配者となります。
間接保有の割合は以下のように計算します:
- C氏のB社に対する支配率:100%
- B社のA社に対する支配率:30%
- C氏のA社に対する間接支配率:100% × 30% = 30%
この場合、C氏は25%超の支配率を持つため、A社の実質的支配者として申告する必要があります。
2. 実務上の課題と解決方法
実質的支配者の特定・申告において、以下のような実務上の課題が生じることがあります:
課題 | 解決方法 |
---|---|
株主が多数存在し、実質的支配者の特定が困難 | 株主名簿を基に25%超の保有者を特定。該当者がいない場合は代表取締役等を実質的支配者として申告 |
外国法人が株主の場合の実質的支配者特定 | 外国法人の登記簿謄本や株主名簿等の翻訳文を準備し、最終的な支配者まで遡って特定 |
実質的支配者の本人確認書類の取得が困難 | 事前に関係者に説明し、協力を得られるよう調整。オンラインでの提出方法も確認 |
支配構造が複雑で図示が困難 | 専門家(司法書士等)の協力を得て、適切な支配構造図を作成 |
3. 虚偽申告のリスクと罰則
実質的支配者に関する虚偽申告は、以下のようなリスクを伴います:
- 犯収法違反による罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
- 金融機関との取引拒絶や口座凍結のリスク
- 会社の社会的信用の低下
- 国際取引における障壁の発生
正確な情報提供を心がけ、不明点は専門家に相談することが重要です。
変更に対応するための実務的アドバイス
1. 会社設立前の準備
会社設立を円滑に進めるため、以下の事前準備をお勧めします:
- 株主構成の明確化:出資者と出資比率を明確にし、実質的支配者を事前に特定
- 必要書類の事前収集:本人確認書類や支配関係を示す資料を早めに収集
- 公証役場への事前確認:必要書類や手続きについて管轄の公証役場に確認
- 専門家への相談:複雑な株主構造の場合は、司法書士等の専門家に相談
2. 既存会社における対応
既存の会社においても、実質的支配者情報の管理・更新が重要です:
- 実質的支配者情報の定期的な確認・更新:少なくとも年1回
- 株主変動時の実質的支配者情報の見直し:株式譲渡や増資時など
- 金融機関取引における実質的支配者情報の提供準備:取引開始時や定期的な確認時
- 社内規程の整備:実質的支配者情報の管理体制を構築
まとめ:透明性向上のための重要な一歩
実質的支配者の認定方法の変更は、国際的なマネーロンダリング対策の強化を背景とした、企業の透明性向上のための重要な一歩です。株式会社設立時の定款認証においては、これらの変更点を正確に理解し、適切に対応することが求められます。
特に以下の点を押さえておくことが重要です:
- 実質的支配者の定義と認定方法の変更点を理解する
- 定款認証時に必要な実質的支配者関連書類を準備する
- 間接保有も含めた支配構造を正確に把握する
- 虚偽申告のリスクを認識し、正確な情報提供を心がける
株式会社設立を検討している方は、これらの変更点を踏まえた上で、準備を進めることをお勧めします。不明点や複雑なケースについては、専門家への相談が有効です。当事務所では、会社設立に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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