離婚届の新様式と養育費の公正証書化 - 子どもの権利を守る重要な制度改正
2021年、離婚届の様式が見直され、養育費の取り決めに関する新たなチェック欄が追加されることが報じられました。この変更は、子どもの養育費が確実に支払われるようにするための重要なステップです。本記事では、この制度改正の背景と実務上の影響、そして離婚時に養育費を確実に取り決めるための方法について詳しく解説します。
本記事のポイント:
- 離婚届に養育費の公正証書化を確認するチェック欄が追加された背景
- 養育費を公正証書化する重要性と法的効力
- 養育費の取り決めがない場合の対応策
- 家庭裁判所の調停手続きを利用するメリット
- 離婚手続きを進める際の専門家サポートの活用法
離婚届の見直しとは?
令和3年4月16日、上川法務大臣は離婚届の様式を見直すよう指示しました。この見直しの目的は、協議離婚における養育費の取り決めが公正証書化されているかどうかを確認するためのチェック欄を追加することです。
この改正は、日本の協議離婚制度における大きな課題—離婚後の養育費不払い問題に対応するためのものです。厚生労働省の調査によれば、離婚家庭のうち養育費を継続的に受け取っている割合は約24%にとどまっており、多くの子どもたちが経済的に不安定な状況に置かれています。
新しい離婚届には、以下のようなチェック項目が追加されています:
- 養育費の取決めの有無
- 養育費に関する公正証書の作成の有無
- 養育費の取決めの内容(支払金額、支払期間など)
これにより、養育費の支払いが滞った場合でも、強制執行が可能な公正証書を利用して、養育費を確実に取り立てることができるようになります。
法改正の背景
この離婚届の見直しは、「子どもの権利を保障する親子法制度の実現に向けた基本方針」の一環として行われました。日本では長年、離婚後の養育費不払いが社会問題となっており、ひとり親家庭の貧困率の高さにも影響しています。公正証書化の促進は、養育費の支払いを確実にし、子どもの生活を安定させることを目指しています。
養育費の公正証書化の重要性
養育費は、離婚後の子どもの生活を支える重要な資金です。しかし、実際には養育費が支払われないケースも少なくありません。公正証書化された養育費の取り決めは、法的に強制力を持ち、支払いが滞った場合でも迅速に対応できるという利点があります。
強制執行が可能
公正証書に「強制執行認諾文言」を入れることで、裁判を経ずに直接強制執行の申立てが可能になります。これにより、養育費の回収プロセスが大幅に迅速化されます。
法的証明力が高い
公正証書は「真正に成立した」と推定される文書であり、内容について争いが生じた場合でも高い証明力を持ちます。
将来的な紛争予防
取り決めの内容が明確に文書化されることで、後になって「そんな約束はしていない」などの言い逃れを防止できます。
子どもの権利保障
養育費は子どもの権利であるという認識を促し、確実な支払いを担保することで子どもの生活と教育の安定を図ります。
公正証書とは?
公正証書とは、公証人が作成する法的文書で、契約内容を明確にし、法的な強制力を持たせるものです。養育費の取り決めを公正証書化することで、支払いが滞った場合に強制執行が可能となり、迅速に養育費を回収することができます。
公正証書作成の基本的な流れ:
- 公証役場への予約:事前に公証役場に連絡して日時を予約します
- 必要書類の準備:離婚協議書の原案、本人確認書類、印鑑などを用意
- 公証人との打ち合わせ:内容の確認や修正を行います
- 公正証書の作成:公証人が内容を確認し、公正証書を作成
- 署名・押印:当事者が内容を確認後、署名・押印します
費用目安:養育費に関する公正証書の作成費用は、約5万円前後が一般的です(内容や条項の複雑さにより変動します)
養育費の取り決めがない場合の対策
協議離婚において、養育費の取り決めがない場合も多くあります。その理由として、離婚協議書を公正証書で作成する費用や手続きの負担が挙げられます。こうした場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用することが推奨されます。
家庭裁判所の調停手続きの利用
家庭裁判所の調停手続きを利用することで、養育費の取り決めを行うことができます。この手続きは、収入印紙1200円と切手1000円程度、戸籍謄本1通の取得費を合わせて数千円程度で行うことが可能です。公正証書と同様に、強制執行で養育費を取り立てることができるため、費用対効果の高い方法と言えます。
STEP 1: 調停の申立て
家庭裁判所に養育費請求調停の申立書を提出します。申立書の書式は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
STEP 2: 調停の期日
調停委員を交えて話し合いを行います。一般的に複数回の期日が設けられ、合意に向けて調整が行われます。
STEP 3: 調停成立
合意に達すると調停調書が作成されます。この調書は公正証書と同様に強制執行力を持ちます。
STEP 4: 履行確保
支払いが滞った場合は、調停調書を基に強制執行の申立てが可能です。また、家庭裁判所の履行勧告制度も利用できます。
調停と公正証書の比較
項目 | 家庭裁判所の調停 | 公正証書 |
---|---|---|
費用 | 数千円程度 | 約5万円前後 |
手続き期間 | 数ヶ月程度 | 数日〜数週間 |
第三者の関与 | 調停委員が間に入る | 公証人が確認のみ |
強制執行力 | あり | あり(認諾文言必要) |
適している場合 | 話し合いが難しい場合 経済的負担を抑えたい場合 | すでに合意がある場合 迅速に手続きを済ませたい場合 |
当事務所のサポート
当事務所では、公正証書で離婚協議書を作成する際の公証役場との打ち合わせや文案の調整、家庭裁判所への調停申立書類の作成をサポートしています。離婚を考えている方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。あなたに最適な離婚手続きをアドバイスさせていただきます。
離婚協議書の作成サポート
養育費だけでなく、親権、面会交流、財産分与などを含めた包括的な離婚協議書の作成をサポートします。
公正証書作成の代行
公証役場との打ち合わせや文案の調整、必要書類の準備など、公正証書作成の全プロセスをサポートします。
調停申立てのサポート
家庭裁判所への調停申立書類の作成や提出手続き、調停での主張内容の整理などをサポートします。
養育費の算定アドバイス
裁判所の算定表に基づいた適正な養育費の金額や支払期間などについてアドバイスします。
相談の流れ
- お問い合わせ: 電話またはメールでお気軽にご連絡ください。
- 初回相談: 専門家があなたの状況を詳しくお伺いし、最適な手続きをご提案します。
- 手続きのサポート: 必要な書類の作成や手続きの進行を全面的にサポートします。
まとめ
離婚届の見直しと養育費の公正証書化は、子どもの生活を守るための重要なステップです。公正証書化された養育費の取り決めは、法的な強制力を持ち、支払いが滞った場合でも迅速に対応できるという利点があります。
養育費の問題は子どもの将来に大きく影響する重要な問題です。離婚を考えている方は、養育費の取り決めを確実に行い、必要に応じて公正証書化することをお勧めします。費用面で公正証書の作成が難しい場合は、家庭裁判所の調停手続きという選択肢もあります。
離婚手続きは複雑で感情的にも難しいものです。専門家のサポートを受けながら、子どもの利益を最優先に考えた取り決めを行うことが大切です。
お問い合わせ先
離婚手続きや養育費の取り決めについてご不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。
司法書士・行政書士和田正俊事務所
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