法定後見(後見・保佐・補助)

法定後見(後見・保佐・補助)

法定後見制度(後見・保佐・補助)完全ガイド - 判断能力が低下した方を守る法的支援の仕組み

認知症や障害などにより判断能力が低下した方の権利を守り、生活をサポートするための「法定後見制度」。この制度は、家庭裁判所が選任した後見人等が本人に代わって財産管理や重要な契約を行うことで、本人の生活と財産を守る重要な制度です。本記事では、法定後見制度の基本から実際の申立て手続きの流れまで、専門家の視点から詳しく解説します。

本記事のポイント:

  • 法定後見制度の基本と3つの類型(後見・保佐・補助)の違い
  • 法定後見申立てのメリット・デメリット
  • 申立てから後見開始までの手続きの流れ
  • 当事務所が提供する法定後見サポートの内容

法定後見制度とは - 判断能力に応じた3つの支援形態

法定後見制度は、判断能力の低下した方をサポートするために設けられた法的支援制度です。認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方に対して、家庭裁判所が選任した後見人等が本人に代わって、または本人と共に意思決定を行い、本人の権利や財産を守ります。

この制度は、判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3つの類型に分かれており、それぞれ支援の内容や後見人等の権限が異なります。どの類型が適用されるかは、医師の診断書や家庭裁判所の調査官による調査結果に基づいて、最終的に家庭裁判所が判断します。

法定後見制度の説明

後見・保佐・補助の違い - 判断能力の程度に応じた3つの類型

法定後見制度の3つの類型について、判断能力の程度や後見人等の権限の違いを表で整理しました。ご本人の状態に最も適した類型を選ぶことが重要です。

類 型補 助保 佐後 見
対象となる人判断能力が
不十分な人
判断能力が
著しく不十分な人
ほとんど
判断できない人
具体例軽度の認知症など
日常生活で失敗が目立つ
中程度の認知症
家事や買い物で困ることが増えた
重度の認知症など
家族の判別も難しい
本人の同意が必要か必要不要不要
援助者の職務付与された範囲で日常生活や財産を管理付与された範囲で生活・財産管理全面的な生活・財産管理
援助者の義務本人の心身の状態と生活状況に十分配慮する義務
後見・保佐・補助の違い

判断能力の程度と類型の関係:

もっとも判断能力が衰えた状態に該当するのが「後見」です。一般に、補助 < 保佐 < 後見の順で後見人等の権限が大きくなります。どの類型になるかは最終的に家庭裁判所が判断します。

それぞれの類型の選択は、本人の自己決定権と保護のバランスを考慮して行われます。できるだけ制約の少ない類型を選ぶことが望ましいとされています。

後見類型の特徴と権限

後見は、判断能力がほとんどない方を対象とする最も強力な支援制度です。

  • 成年後見人の権限:本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を包括的に行うことができます
  • 取消権:本人が行った不利益な法律行為を取り消すことができます
  • 同意権:特定の法律行為について本人の同意を代行できます
  • 代理権:本人に代わって契約などを行うことができます

保佐類型の特徴と権限

保佐は、判断能力が著しく不十分な方を対象とする中間的な支援制度です。

  • 保佐人の権限:民法13条1項に定められた重要な法律行為(借金、不動産売買など)について同意権・取消権があります
  • 代理権:申立ての際に特定の事項について代理権を付与することができます(本人の同意が必要)

補助類型の特徴と権限

補助は、判断能力が不十分な方を対象とする最も制限の少ない支援制度です。

  • 補助人の権限:申立ての際に特定の法律行為(民法13条1項の一部)について同意権・取消権を付与できます
  • 代理権:申立ての際に特定の事項について代理権を付与することができます
  • 本人の同意:補助開始の審判および同意権・代理権の付与には本人の同意が必要です

法定後見(後見・保佐・補助)申立てのメリット・デメリット

法定後見制度の利用を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解することが重要です。ご本人の状況や家族の事情に合わせて、制度利用の是非を判断しましょう。

法定後見のメリット

  • 財産の適正管理:本人の財産を後見人等が適正に管理することで、資産の減少や散逸を防ぎます
  • 財産保護:後見人等による取消権行使で悪徳商法などから財産を守ることができます
  • 身上監護:生活状況の見守りや話し相手になるなど、本人の生活に安心感をもたらします
  • 専門家のサポート:法律や福祉の専門家が後見人等に選任されることで、専門的な支援を受けられます
  • プライバシー保護:後見人等には守秘義務があり、本人のプライバシーが保護されます
  • 家庭裁判所の監督:後見人等の業務は定期的に家庭裁判所が監督し報告を求めるため、不正防止につながります
法定後見のメリット

法定後見のデメリット

  • 手続きに時間がかかる:申立てから後見人等の選任まで通常3ヶ月程度かかり、緊急の対応には向きません
  • 費用負担:家庭裁判所の費用(印紙800~2,400円、登記2,600円、郵便切手3,700~4,700円、鑑定料5~15万円など)に加え、診断書費用や調査費、書類作成出頭費なども必要です
  • 資格・地位制限:後見・保佐の対象者には会社役員や公務員資格の制限がある場合があります(補助類型では制限なし)
  • 遺言作成の制限:後見開始後に本人が遺言を作る場合は医師2名以上の立会いが必要となります
  • 自己決定権の制限:特に後見類型では、本人の自己決定権が大きく制限される場合があります
法定後見のデメリット

制度選択のポイント:

法定後見制度と任意後見制度はどちらが良いというものではなく、本人の状況や希望によって選択すべき制度が異なります。一般的に、以下のような場合は法定後見制度の利用を検討すると良いでしょう:

  • すでに判断能力が低下している場合
  • 親族間で本人の支援について意見が対立している場合
  • 財産管理や身上監護について専門的な判断が必要な場合
  • 悪徳商法などの被害から本人を守る必要がある場合

一方、判断能力があるうちに将来に備えたい場合は、任意後見制度の活用も検討すると良いでしょう。

当事務所の法定後見サポートサービス

当事務所では、法定後見に関する以下のサービスを提供しております。専門的な知識と経験を活かし、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なサポートをご提案いたします。

提供サービス内容

  • 法定後見制度の説明と最適類型の提案:本人の状況に応じた最適な後見類型を提案します
  • 申立て書類・各種報告書類の作成:複雑な申立て書類や家庭裁判所への報告書類を正確に作成します
  • 必要書類の収集サポート:戸籍謄本や住民票、診断書など必要書類の収集をサポートします
  • 家庭裁判所への申立て代行:家庭裁判所への申立て手続きを代行します
  • 審問・調査への同席:家庭裁判所の審問や調査に同席し、適切なサポートを行います
  • 成年後見人・保佐人・補助人への就任:専門家として後見人等に就任することも可能です
  • 後見事務の定期報告サポート:後見人等に選任された後の定期報告書作成もサポートします
法定後見のサポート

その他、お客様のご要望に合わせて柔軟に対応いたしますので、お気軽にお声かけください。初回相談は30分無料ですので、ご遠慮なくご相談ください。

法定後見(後見・保佐・補助)申立てから開始までの流れ

法定後見制度の利用を始めるには、家庭裁判所への申立てから始まり、いくつかのステップを経て後見等が開始されます。当事務所では、この一連の流れをトータルでサポートいたします。

STEP 1: お電話・メールでご相談

「法定後見で相談」とお気軽にお問い合わせください。専門家が丁寧にヒアリングし、ご事情に合ったアドバイスをさせていただきます。初回相談は30分無料です。

相談受付

STEP 2: ご本人様・財産状況のヒアリング・打ち合わせ

書類作成担当者がご本人様の現状や財産内容を伺い、最適な申立類型を判断・ご案内いたします。この段階では以下のような情報をお伺いします:

  • 本人の現在の判断能力や生活状況
  • 財産の内容(預貯金、不動産、債務など)
  • 親族関係(推定相続人の有無と関係性)
  • 後見人等の候補者

「法定後見用ご相談票」をご利用いただくと便利です。また、財産に関する資料(預金通帳、不動産の権利証など)があれば、よりスムーズです。

ヒアリング

STEP 3: 法定後見申立書類の作成・収集

面談内容や資料に基づき、後見申立書類を正確に作成し、必要な公的書類も収集します。主な書類は以下の通りです:

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人情報シート
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 本人の戸籍謄本、住民票
  • 診断書(成年後見用)
  • 親族の同意書

当事務所では、これらの複雑な書類作成を丁寧にサポートします。

書類作成

STEP 4: 家庭裁判所との日程調整

書類が整ったら、裁判所と申立提出日と面談日の調整を行います。申立人や後見人等候補者の面談は通常、申立提出日と同日に行われることが多いです。

STEP 5: 家庭裁判所への申立て・審理

家庭裁判所へ申立てを行います。申立て後、以下のような審査が行われます:

  • 調査官による調査(本人面談、生活状況確認など)
  • 本人の鑑定(必要に応じて)
  • 親族への意向照会(本人の親族に対して意見照会)

申立てから約2か月後に審判で開始類型と後見人等の選任が通知されます。当事務所では、これらの手続きにも適切にサポートいたします。

STEP 6: 審判確定

審判が通知された日から2週間で確定します。この期間中に不服申立て(即時抗告)がなければ、審判は確定し、後見等が開始されます。確定後、後見人等は正式に財産管理や身上監護などの後見事務を行うことができます。

STEP 7: 後見登記

家庭裁判所からの通知に基づき、法務局(後見登記担当)へ登記依頼を行います。登記完了まで約10日~2週間かかります。登記後、後見人等は「登記事項証明書」を取得することができ、これが後見人等の資格を証明する公的書類となります。

STEP 8: 財産目録・収支予定表提出・後見事務開始

後見開始後、1ヵ月以内に資産負債目録や収支予定表を作成し、家庭裁判所に提出する必要があります。これは本人の財産状況を正確に把握し、適切な財産管理を行うための重要な手続きです。

その後も、以下のような定期的な報告が必要です:

  • 後見等事務報告書(年1回程度)
  • 財産目録の更新
  • 収支状況報告

当事務所では、これらの報告書作成や後見事務のサポートも行っております。

後見人等の主な業務:

後見人等には主に以下のような業務があります:

  • 財産管理:預貯金の管理、不動産の管理、各種支払い、税金の申告など
  • 身上監護:医療・介護サービスの契約、施設入所の契約、生活環境の整備など
  • 定期報告:家庭裁判所への定期的な報告(財産状況、生活状況など)
  • 本人の意思尊重:できる限り本人の意思を尊重した支援を行う

これらの業務は本人の状況や後見類型によって異なりますが、いずれも本人の利益を最優先に考えて行われます。

よくある質問と回答 - 法定後見制度に関する疑問にお答えします

Q1. 法定後見の申立ては誰ができますか?

A. 法定後見の申立ては以下の方が行うことができます:

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族(子、兄弟姉妹、甥姪、いとこなど)
  • 検察官
  • 市町村長(本人の福祉を図るために特に必要があると認める場合)

親族がいない場合や協力が得られない場合は、市町村長申立てという制度もあります。また、本人と特別な関係がある方(内縁の配偶者、長年の友人など)は、家庭裁判所の許可を得て申立てを行える場合もあります。

Q2. 法定後見人になれるのは誰ですか?

A. 後見人等には以下のような方が選任されます:

  • 親族:配偶者、子、兄弟姉妹などの親族
  • 専門職:弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家
  • 法人:社会福祉法人、法人後見を行う団体など
  • 市民後見人:研修を受けた一般市民

後見人等は家庭裁判所が本人にとって最適な人物を選任します。必ずしも申立人が希望する人物が選任されるとは限りませんが、本人との関係性や専門性などを考慮して決定されます。近年は、複数の後見人等を選任する「複数後見」も増えています(例:親族と専門職の組み合わせなど)。

Q3. 法定後見の費用はどれくらいかかりますか?

A. 法定後見には以下のような費用がかかります:

  • 申立て費用
    • 収入印紙:800円~2,400円(類型による)
    • 登記費用:2,600円
    • 郵便切手:3,700円~4,700円程度
    • 鑑定費用:5万円~15万円程度(鑑定が必要な場合)
    • 診断書費用:5,000円~20,000円程度(医療機関による)
  • 後見人等への報酬
    • 月額2万円程度が標準(本人の財産規模や後見事務の難易度により変動)
    • 報酬付与の審判により家庭裁判所が決定
  • 専門家への依頼費用
    • 申立て書類作成・手続き代行費用:事務所により異なる
    • 当事務所では、ご相談内容に応じて適切な費用をご案内いたします

なお、申立て費用や報酬は本人の財産から支払われるのが原則ですが、本人に十分な財産がない場合は成年後見制度利用支援事業による助成制度もあります。

Q4. 法定後見と任意後見はどう違いますか?

A. 主な違いは以下の通りです:

項目法定後見任意後見
開始時期判断能力低下後判断能力があるうちに契約し、低下後に発効
後見人の選任家庭裁判所が選任本人が自分で選任
後見の内容法律で定められた権限契約で自由に設定可能
本人の意思直接反映されにくい契約に反映できる

法定後見は、すでに判断能力が低下している方に適しており、任意後見は将来に備えて事前に準備しておきたい方に適しています。状況に応じて最適な制度を選ぶことが重要です。

Q5. 後見人等は本人の財産を自由に使えるのですか?

A. いいえ、後見人等は本人の財産を自由に使うことはできません。後見人等は「善良な管理者の注意」をもって本人の財産を管理する義務があり、本人の利益のためにのみ財産を使用できます。主な制限として:

  • 本人の生活費や医療・介護費用など、本人の生活に必要な支出に限られる
  • 高額な支出や不動産の売却などには家庭裁判所の許可が必要
  • 後見人等の個人的な目的での使用は禁止されている
  • 定期的に家庭裁判所に収支報告を行う義務がある

これらの制限により、本人の財産が不当に減少することを防ぎます。もし後見人等が不適切な財産管理を行った場合、家庭裁判所により解任されることもあります。

法定後見制度を活用した権利擁護 - まとめ

法定後見制度は、認知症や障害などにより判断能力が低下した方の権利を守り、その人らしい生活を支える重要な制度です。後見・保佐・補助という3つの類型があり、本人の判断能力の状態に応じた適切な支援を提供します。

この制度の活用により、以下のようなメリットが得られます:

  • 財産管理の適正化と財産の保護
  • 悪徳商法や詐欺被害の防止
  • 適切な身上監護による生活の質の向上
  • 家庭裁判所の監督による安心感

一方で、手続きの複雑さや費用負担、本人の自己決定権との兼ね合いなど、検討すべき点もあります。申立てを検討する際には、本人の状況や希望、家族の事情などを総合的に考慮し、最適な支援の形を選ぶことが大切です。

当事務所では、法定後見制度の申立て手続きから後見事務のサポートまで、トータルでお手伝いいたします。専門的な知識と経験を活かし、お客様一人ひとりに寄り添ったサポートを提供します。法定後見に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

早めの対応が重要です:

判断能力の低下は徐々に進行することが多く、気づいたときには既に重要な財産管理や契約が難しくなっていることもあります。少しでも心配な点があれば、早めに専門家に相談することをお勧めします。当事務所では初回相談30分無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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