認知症を理解する:中核症状と行動・心理症状の違いと対応
認知症は脳の機能低下によって引き起こされる症状の総称です。家族や介護者として認知症の方と向き合うには、「中核症状」と「行動・心理症状」の違いを理解することが重要です。本記事では、それぞれの症状の特徴と対応方法について詳しく解説します。
認知症とは:
認知症は、脳の機能が低下して記憶や判断力などが衰える病気です。アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性など様々な種類がありますが、どのタイプでも共通して見られる症状があります。これらは「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に大別されます。
認知症の中核症状
中核症状とは、脳の神経細胞が直接的に損傷を受けることで起こる認知機能の障害です。認知症の進行に伴って徐々に悪化していくのが特徴です。
記憶障害
最近の出来事や話した内容を忘れる、同じ質問を何度も繰り返すなどの症状が見られます。初期には新しい記憶が作りにくくなり、進行すると過去の記憶も失われていきます。
見当識障害
時間(今日が何日か、何年か)、場所(今どこにいるのか)、人物(家族や自分自身が誰なのか)が分からなくなります。初期には日付の混乱から始まり、進行すると自分の名前や家族の顔も認識できなくなることがあります。
判断力障害
状況に応じた適切な判断ができなくなります。危険を察知できない、詐欺に遭いやすくなる、金銭管理が困難になるなどの症状が現れます。
実行機能障害
日常生活の動作や計画を立てて実行することが難しくなります。着替えの手順が分からなくなる、料理の手順が分からなくなる、複数の作業を同時にこなせなくなるなどの症状が見られます。
言語障害
言葉の意味や使い方が分からなくなり、コミュニケーションが困難になります。言いたいことが伝わらない、言葉が出てこない、会話の内容が理解できないなどの症状が現れます。
失認
物や人の名前や役割が分からなくなります。日常的に使う物の用途が分からない、自分の姿を鏡で見ても認識できないなどの症状が見られます。
中核症状の特徴
- 脳の器質的な変化によって直接引き起こされる症状
- 認知症の進行に伴って徐々に悪化する
- 現在の医学では完全に回復させることは難しい
- 薬物療法で進行を遅らせることは可能
- すべての認知症の方に共通して見られる
認知症の行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状は、認知機能の低下に伴う本人の不安や混乱、環境要因、身体的要因などが複雑に絡み合って生じる症状です。中核症状と異なり、適切なケアや環境調整によって改善が期待できます。
無気力・無関心
何にも興味を示さなくなる、引きこもりがちになる、服装や衛生状態に無関心になるなどの症状が見られます。以前は楽しんでいた趣味や活動にも興味を示さなくなります。
徘徊
理由もなく外に出かけたり、家の中を歩き回ったりします。特定の目的地を探している場合もあれば、単に落ち着かない気持ちから動き回る場合もあります。
独語・無言
一人で話しかけたり、つぶやいたりする一方で、全く言葉を発しなくなる場合もあります。コミュニケーションの取り方が大きく変化することがあります。
性格変化
以前とは違う性格になることがあります。温厚だった人が怒りっぽくなったり、逆に自立心の強かった人が甘えるようになったりします。
妄想
実際には存在しないことを信じ込みます。物を盗まれたという被害妄想、家族や介護者を他人だと思う誤認妄想、配偶者の浮気を疑う嫉妬妄想などが見られます。
幻覚
実際には存在しないものが見えたり(幻視)、聞こえたり(幻聴)します。特に人や動物、虫などが見える幻視が多く、レビー小体型認知症では顕著に現れます。
うつ状態
気分が落ち込んだり、自己嫌悪に陥ったりします。特に認知症初期に自分の能力低下を自覚する時期に見られることが多いです。
暴力・暴言
口汚く罵ったり、手を出したりすることがあります。これは混乱や不安、恐怖心から生じる防衛反応であることが多いです。
過食・異食
食べ物に対して執着したり、際限なく食べたり、甘いものばかりを欲しがったりします。また、食べられないものを口に入れる異食行動が見られることもあります。
行動・心理症状の理解と対応
行動・心理症状は、認知症の人の苦痛や不安を表すサインでもあります。これらの症状は次のような要因で引き起こされることがあります:
- 身体的不調:痛み、便秘、脱水、感染症など
- 環境要因:騒音、照明、温度、見慣れない場所など
- 心理的要因:不安、恐怖、孤独感、混乱など
- 対人関係:コミュニケーション不足、接し方の問題など
行動・心理症状に対応する際は、まず「なぜその行動が起きているのか」という視点で考え、本人の気持ちや思いを理解しようとすることが大切です。
認知症の方への接し方と対応のポイント
本人の気持ちに寄り添う
認知症の方が示す行動には必ず理由があります。「なぜそうするのか」を本人の立場になって考え、感情や意図を理解しようとする姿勢が大切です。
環境を整える
騒音や光、温度などの環境要因を調整し、落ち着ける空間を作りましょう。見慣れた物や写真などを置くことで安心感を与えることもできます。
コミュニケーションの工夫
ゆっくり、はっきりと、簡潔に話しかけましょう。複雑な質問や選択肢は避け、一つずつ対応することが有効です。言葉だけでなく、表情やジェスチャーも使いましょう。
専門家へ相談する
対応に困った場合は、一人で抱え込まず医師や専門家に相談しましょう。薬物療法や非薬物療法など、適切な治療やケアの方法があります。
まとめ:一人ひとりに合ったケアを
認知症は、中核症状と行動・心理症状の両方が見られることが多いですが、その現れ方は一人ひとり異なります。それぞれの個性や特徴、生活歴を尊重し、その人に合ったケアを行うことが大切です。
また、認知症の方を支える家族や介護者自身のケアも忘れてはいけません。適切な情報収集や相談先の確保、レスパイトケア(介護者の休息)の利用なども検討しましょう。
認知症の方に寄り添い、共に歩んでいくことが、本人にとっても介護者にとっても最善の支援になります。状況が難しくなった場合は、成年後見制度などの法的支援の活用も選択肢の一つとして考えられます。
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