意思決定支援とは

意思決定支援とは

意思決定支援と代行決定:成年後見制度の重要概念

成年後見制度における「意思決定支援」と「代行決定」は、本人の権利や尊厳を守るために欠かせない概念です。この記事では、両者の意味と関係性について解説します。

重要ポイント:

  • 意思決定支援は本人の自己決定を尊重し、支える取り組み
  • 代行決定は本人に代わって他者が決定を行うこと
  • 両者は対立概念ではなく、補完関係にある
  • 可能な限り意思決定支援を優先し、代行決定は最終手段として位置づける

意思決定支援とは

意思決定支援とは、本人が自分のことを自分で決める権利を尊重し、その実現を支援する活動です。単に本人の希望をそのまま認めるのではなく、本人が十分な情報と理解に基づいて自分らしい選択ができるよう手助けすることを意味します。

意思決定支援の核心は、「支援を受けても自分で決める」という点にあります。認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方であっても、適切な支援があれば自分の意思を形成し表明することができます。

意思決定支援の具体的な方法

  • 情報提供:本人が理解できる形で必要な情報を提供する
  • 意思の引き出し:本人の表情や反応から真の希望を丁寧に読み取る
  • 選択肢の提示:本人の価値観や好みに基づいた現実的な選択肢を示す
  • 環境調整:本人が落ち着いて考えられる場や時間を確保する
  • 経験の機会提供:実際に体験することで選択の理解を深められるようにする

具体例①:食事の選択

毎日の食事メニューを決める際、「何が食べたいですか?」と単に尋ねるだけでなく、いくつかの具体的な選択肢を示したり、写真を見せたりすることで、本人が自分の好みに合わせて選択できるよう支援します。

具体例②:住まいの決定

施設入所を検討する場合、複数の施設を実際に見学する機会を設けたり、それぞれの特徴や生活スタイルを分かりやすく説明したりすることで、本人の希望や価値観に沿った選択ができるよう支援します。

代行決定とは

代行決定とは、本人に代わって他者が決定を行うことです。本人の判断能力が著しく不足している場合や、本人が意思表明できない場合に、本人の利益を守るために行われます。

代行決定の特徴

  • 本人の利益保護:本人の安全や財産を守ることを目的とする
  • 能力不足の前提:本人が自分で適切な判断ができないことを前提とする
  • 権利制限:本人の自己決定権に一定の制限を伴う
  • 法的根拠:成年後見制度などの法的枠組みに基づいて行われる

具体例①:財産管理

成年後見人が本人の預貯金を管理し、本人の生活に必要な支払いを代わりに行います。高額な支出や不動産の処分には裁判所の許可が必要です。

具体例②:不利益な契約の取消

本人が判断能力が不十分な状態で結んだ不利益な契約を、成年後見人が取り消すことができます。例えば、必要のない高額商品の購入契約などが該当します。

意思決定支援と代行決定の関係

意思決定支援と代行決定は対立する概念ではなく、ともに本人の幸せや尊厳を守るための手段です。しかし、国際的な潮流や障害者権利条約の理念に基づけば、意思決定支援を優先し、代行決定は最後の手段として位置づけるべきだとされています。

意思決定支援の優先理由

  • 本人の自己決定権の尊重
  • 本人の能力を最大限に引き出せる
  • 本人の自信や自尊心の向上
  • 本人らしい生活の実現

代行決定が必要な場合

  • 本人の意思確認が困難な場合
  • 本人に明らかな危険がある場合
  • 緊急性が高い状況
  • 法的手続きが必要な場合

成年後見人による意思決定支援の実践

成年後見人は、法的には代行決定の権限を持ちますが、その権限行使に先立ち、以下のような意思決定支援の実践が求められます:

  1. 本人の希望・価値観の把握:生活歴や日常の好みなどから本人の価値観を理解する
  2. 分かりやすい情報提供:本人が理解できる方法で情報を伝える
  3. 時間と場所の配慮:本人が落ち着いて考えられる環境を整える
  4. 選択肢の工夫:本人が選びやすい形で選択肢を提示する
  5. 周囲の支援者との連携:家族や介護者など本人を取り巻く人々と協力する

これらの支援を尽くしても本人の意思確認が困難な場合や、明らかに本人の利益に反する場合に限り、代行決定を行うことを検討します。

まとめ:本人を中心とした支援の実現

意思決定支援と代行決定は、本人の幸せを実現するための車の両輪とも言えます。大切なのは、常に本人を中心に考え、本人の意思と尊厳を最大限に尊重することです。

成年後見制度においても、単なる財産管理や身上監護にとどまらず、本人の「自分らしく生きる権利」を支える制度として、意思決定支援の理念が重視されるようになっています。

当事務所では、成年後見業務において本人の意思決定を尊重し、きめ細やかな支援を心がけています。成年後見制度についてのご相談や疑問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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