司法書士(専門職)後見人の役割:権利擁護と意思決定支援の最前線
成年後見制度は認知症や障害により判断能力が低下した方の権利を守る重要な制度ですが、その普及や運用にはまだ課題があります。本記事では、第二期成年後見制度利用促進基本計画の概要と、司法書士が専門職後見人としてどのような役割を果たせるのかについて解説します。
記事のポイント:
- 第二期成年後見制度利用促進基本計画の目標と取り組み
- 司法書士(専門職)後見人の具体的な役割
- 権利擁護支援ネットワークにおける専門職の位置づけ
- 本人の意思決定支援を重視した後見活動の実践
第二期成年後見制度利用促進基本計画とは
成年後見制度は、認知症や障害などにより判断能力が低下したり、失われたりした人の権利を守り、自立した生活を支援するための制度です。しかし、この制度はまだ十分に普及しておらず、利用者数も少なく、利用者のニーズに応えられる体制も整っていません。
そこで政府は、平成30年(2018年)から令和5年(2023年)までの5年間を第二期成年後見制度利用促進基本計画の期間とし、成年後見制度の運用改善や見直しに向けた取組を推進しています。
基本計画の主な目標
- 本人の意思・選好の尊重:本人にとって最善の支援を提供するために、補助・保佐・後見の三類型を一元化し、必要性・補充性の考慮を徹底する
- 任意後見制度の信頼性向上:本人が安心して任意後見契約を結べるよう、制度の信頼性や利便性を高める
- 多職種連携の強化:本人が日常生活で直面する様々な課題に対応できるよう、権利擁護支援チームや地域連携ネットワークを通じて、福祉・医療・司法などの関係者が協力して支援する
- 支援体制の整備:公的関与や中核機関の役割を明確化し、後見人等の養成・育成や報酬助成などの支援体制を整備する
司法書士(専門職)後見人として何ができるか
司法書士が専門職後見人として果たせる役割は多岐にわたります。法律の専門知識を活かしながら、本人の権利擁護と意思決定支援を中心に据えた活動が求められています。
「後見の専門職」としての役割
本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援や身上保護も重視した後見事務を行います。財産管理だけでなく、本人の生活全体を見据えた支援を実践します。
権利擁護支援チームの一員として
権利擁護支援チームに「後見の専門職」として加わり、適切に本人の権利擁護を図る活動を行います。他の専門職や支援者と連携し、チームとして本人を支えます。
福祉と司法の連携強化
「『司法による権利擁護支援』の担い手」・「国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする法律事務の専門家」として、権利擁護支援の地域連携ネットワーク等を通じた福祉と司法の連携強化に貢献します。
具体的な活動内容
適切な後見類型の検討
本人の意思や選好を把握し、本人にとって最善の支援方法を選択するために、補助・保佐・後見の三類型の利用について、必要性・補充性を慎重に考慮します。
任意後見契約のサポート
本人が安心して任意後見契約を結べるように、契約の内容や効果を分かりやすく説明し、契約書の作成や登記手続きを行います。
多職種連携による生活支援
本人が日常生活で直面する様々な課題に対応できるように、本人に身近な親族や地域、保健・福祉・医療の関係者などと連携し、本人の財産管理や生活支援、医療判断などの後見事務を行います。
制度改善への貢献
公的関与や中核機関の役割を明確化し、後見人等の養成・育成や報酬助成などの支援体制を整備するために、司法書士会や法テラスと協力し、調査研究や提言などを行います。
意思決定支援の実践例
司法書士(専門職)後見人として、以下のような意思決定支援を実践しています:
- 情報の提供:本人が理解できる方法で、選択に必要な情報を提供します
- 選択肢の工夫:本人の好みや価値観に合わせた選択肢を複数用意します
- 本人に寄り添う:本人の表情や反応を丁寧に観察し、真の意思を汲み取ります
- 意思決定のプロセス重視:結論だけでなく、そこに至るプロセスを大切にします
- 定期的な見直し:本人の状況や希望の変化に応じて支援方法を見直します
まとめ:本人中心の権利擁護を目指して
司法書士(専門職)後見人として、成年後見制度の利用促進や運用改善に向けた取組に積極的に関わっています。この仕事には大きな社会的意義があり、本人の権利擁護と自立支援に貢献できることは喜びです。
しかし、まだまだ課題も多く、改善すべき点もあります。今後も司法書士(専門職)後見人として、本人の意思や選好を尊重し、本人にとって最善の支援を提供できるよう努めていきたいと思います。
成年後見制度について興味がある方、ご自身やご家族のために制度の利用を検討されている方は、ぜひご相談ください。一人ひとりの状況に合わせた適切なアドバイスを提供いたします。
成年後見(法定後見、任意後見)を検討されている方へ
滋賀・京都で司法書士にご相談をお考えならぜひお問い合わせください。滋賀県を中心に遺産・遺言・生前贈与・成年後見など、各種手続きに関するサポートを行っております。
司法書士・行政書士和田正俊事務所
住所:〒520-2134 滋賀県大津市瀬田5丁目33番4号
電話番号:077-574-7772
営業時間:9:00~17:00
定休日:日・土・祝
成年後見(法定後見、任意後見)についてのページ
成年後見・権利擁護に関連する記事
【司法書士解説】地面師詐欺から高齢者を守る
2025年7月2日