成年後見制度とは:尊厳ある生活を支える司法の役割
成年後見制度は、高齢者や障害者など、自分の意思表明や財産管理が困難になった方を法的に支援する重要な制度です。本記事では、制度の概要と意思決定支援の重要性について解説します。
成年後見制度の基本:
- 判断能力が不十分な方(成年被後見人)を法的に支援する制度
- 裁判所が任命した成年後見人が本人の意思を尊重しながら支援
- 財産管理だけでなく生活全般の支援も含む
- 本人の尊厳と地域社会への参加を目指す
成年後見制度の理念と目的
成年後見制度は単なる財産管理の仕組みではなく、「本人の尊厳を重んじる」とともに「本人の地域社会への参加を目指す」ものです。司法書士として、この制度を通じて国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の実現に寄与することを使命としています。
私はこの使命に共感し、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの会員としても活動しています。リーガルサポートは、高齢者や障害者などが自らの意思に基づき安心して日常生活を送ることができるように支援する法人です。
成年後見制度の法的根拠
成年後見制度の利用促進に関する法律では、以下の理念が掲げられています:
- 成年被後見人等が、他の人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられるべきこと
- 成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと
- 成年被後見人等の財産の管理のみならず、身上の保護が適切に行われるべきこと
これらの理念に基づき、成年後見制度利用促進基本計画では「地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進」などが重点目標として設定されています。
意思決定支援の重要性
成年後見業務を担当する中で特に感じるのは、本人の意思決定支援の重要性です。意思決定支援とは、本人が自分の生活に関する選択肢を知り、自分の価値観や希望に沿って判断できるように、後見人や周囲の人が情報提供や相談などを行うことです。
重要な法律行為における支援
施設への入所契約など、本人にとって重大な影響を与えるような法律行為をする場合、本人がその内容やメリット・デメリットを理解し、納得して同意できるようにする必要があります。
日常生活における意思表明の配慮
日常の様々な局面でも、本人が自分の意思を表明できるように配慮することが求められます。食事の好み、余暇活動の選択、人間関係など、小さな選択も本人の生活の質に大きく影響します。
ガイドラインに基づく実践
「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を参考に、本人の意思決定支援を実践しています。このガイドラインでは、後見人が本人の意思決定支援を行う際の具体的なイメージや手順が示されています。
意思決定支援の実践例
以下のような方法で意思決定支援を実践しています:
- 情報の工夫:本人が理解しやすいように、文字を大きくしたり、絵や写真を使ったりして情報を提供
- 選択肢の提示:抽象的な質問ではなく、具体的な選択肢を示して本人が選びやすくする
- 表情や仕草の観察:言葉で表現できない方の場合、表情や体の動きから意思を読み取る
- 環境への配慮:本人がリラックスして考えられる環境や時間を確保する
- 関係者との連携:家族や介護者など、本人をよく知る人々と協力して本人の意思を尊重する
意思決定支援の課題と展望
本人の意思決定支援は、一朝一夕にできるものではありません。以下のような課題や困難もあります:
信頼関係の構築
本人との信頼関係を築くには時間がかかります。定期的な訪問や丁寧なコミュニケーションを通じて、少しずつ関係を深めていくことが大切です。
心身状態への対応
本人の心身の状態は日によって変化します。その日の体調や気分に合わせて、柔軟に対応することが必要です。
多職種連携の重要性
医療、福祉、法律など様々な専門家が連携することで、本人を多角的に支援することができます。情報共有と協力体制の構築が課題です。
個別性の尊重
一人ひとり価値観や状況が異なります。マニュアル的な対応ではなく、その人らしさを大切にした個別的な支援が求められます。
まとめ:本人らしい生活の実現を目指して
成年後見制度は、判断能力が不十分な方々の権利を守り、その人らしい生活を支える重要な仕組みです。特に意思決定支援を通じて、本人が自分らしく生きることができるようになることは、大きな価値があります。
司法書士として、法律面のサポートだけでなく、本人の尊厳を重んじ、本人の意思決定を支援することで、誰もが等しく基本的人権を享有できる社会の実現に貢献していきたいと考えています。
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