司法書士の成年後見への役割:個別支援から社会変革まで
司法書士(リーガルサポート)の役割は、単に「個別のケースの支援」にとどまらず、「体制づくりへの参画」や「地域課題への対応」にまで広がっています。本記事では、ミクロとマクロの両視点から見た権利擁護活動について考察します。
司法書士に求められる2つの視点:
- ケースアドボカシー:個人や家族を対象とした個別支援
- クラスアドボカシー:地域や集団を対象とした社会的取り組み
ミクロとマクロの視点:包括的な権利擁護を目指して
判断能力が不十分な方々に対する、より包括的な支援を実現するためには、二つの視点が必要です:
ミクロの視点(個別支援)
個々人に対する直接的な支援を提供し、その人の権利を守ります。例えば、成年後見人として財産管理や身上保護を行うことがこれにあたります。
マクロの視点(環境整備)
法制度の在り方や社会の仕組みを変えることで、判断能力が不十分になっても意思決定支援を受けやすい環境を構築します。これは社会全体の変革を目指す取り組みです。
支援体制の二つのアプローチ
- 特定支援者の充実:個人に特定の支援者(成年後見人など)を用意し、直接的な支援を提供する
- 包摂的社会の実現:特定の支援者がいなくても、脆弱性を持つ人が排除されず社会参加できる環境を整備する
両方のアプローチを組み合わせることで、より強固な権利擁護システムが構築できます。
ソーシャルワーク実践における権利擁護の4つの諸相
① 権利侵害状態からの脱却
健康で文化的な最低限度の生活の維持および権利侵害状態からの脱却を図ります。生命が危険にさらされている状況、最低限度の生活が維持できていない状態、虐待等による権利侵害、不適切な人間関係や非人間的な環境からの救出を行います。
② 積極的権利擁護の推進
本人の自己実現に向けたエンパワメントを志向します。生命や財産を守るだけでなく、「本人らしい生活」と「本人らしい変化」を支え、本人の自己実現に向けた取り組みを保障します。
③ 予防的権利擁護の推進
早期発見・早期対応によって、虐待事例を含む支援困難事例等、深刻な事態に陥ることを未然に防ぎます。地域住民等のインフォーマルサポートと専門職との連携・協働が不可欠です。
④ 権利侵害を生む環境の変革
多様な権利侵害の温床となる環境(社会)の側の変革を促します。就労条件や労働環境、介護や子育てを取り巻く状況、社会的孤立や排除等をソーシャルアクションによって好転させることを目指します。
司法書士としての取り組み
私たち司法書士は、リーガルサポート(成年後見センター)の会員として、上記の4つの視点を踏まえた活動を展開しています:
- 個別事案での権利擁護:成年後見人等として直接支援を提供
- 地域ネットワークへの参画:地域の権利擁護支援ネットワークの一員として活動
- 制度・政策への提言:より良い権利擁護システム構築のための提言活動
- 啓発活動:一般市民向けの講座や相談会の実施
まとめ:司法書士の使命
司法書士の成年後見における役割は、単に個別の法的支援を提供するだけではありません。社会全体の仕組みを変え、判断能力が不十分な方々でも排除されることなく生活できる包摂的な社会の実現に貢献することも重要な使命です。
今後も、この4つの権利擁護の諸相について、具体的な事例や活動報告を交えながらブログで紹介していきたいと思います。判断能力が不十分な方々の権利が尊重される社会の実現に向けて、司法書士としてできることを積極的に模索していきます。
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