本人確認書類に新たな選択肢 - 戸籍の附票の写しが単独で利用可能に
日本司法書士会連合会からの通知によると、令和5年2月1日付で「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」が一部改正されました。この改正により、本人確認書類として「戸籍の附票の写し」が単独で利用できるようになり、手続きの簡素化が図られています。
本記事のポイント:
- 令和5年2月1日から戸籍の附票の写しが単独で本人確認書類として使用可能に
- これまでは戸籍謄本または抄本と一緒に提出する必要があった
- 住民基本台帳法改正により附票に「出生の年月日」が追加されたことが背景
- 不動産取引や会社設立など、本人確認が必要な手続きがスムーズに
- 改正は行政手続きの簡素化・効率化を目的とした取り組みの一環
戸籍の附票の写しとは
「戸籍の附票の写し」は、本籍地の市区町村で戸籍の原本と一緒に保管されている公文書です。この書類には、その戸籍に入籍または作成されてからの住所の変遷が時系列で記載されています。
通常、不動産登記や自動車の登録変更などの手続きにおいて、住民票だけでは登記簿上の住所から現在の住所までの変遷を証明できない場合に利用されます。特に住所変更が頻繁にあった人や、戸籍と住民票の住所が異なる場合に重要な書類となります。
戸籍の附票と住民票の違い
戸籍の附票と住民票はどちらも個人の住所に関する情報を記載した公文書ですが、以下のような違いがあります:
戸籍の附票 | 住民票 |
---|---|
本籍地の市区町村で管理 | 現住所の市区町村で管理 |
戸籍に入籍・編製されてからの住所の全履歴 | 現在の住所と直近の住所変更履歴(限定的) |
戸籍との結びつきが強い | 居住実態との結びつきが強い |
令和4年1月11日以降、生年月日が記載 | 従来から生年月日が記載 |
改正前後の比較
改正前の状況
これまで、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認において、戸籍の附票の写しを利用する場合は、戸籍の謄本または抄本を一緒に提出する必要がありました。これは、附票だけでは生年月日などの個人を特定するための情報が不足していたためです。
そのため、本人確認のためには複数の書類を取得する必要があり、手続きが煩雑でした。
改正後の変更点
令和4年1月11日以降、住民基本台帳法の改正により、戸籍の附票の記載事項に「出生の年月日」が追加されました。これにより、附票単独で個人を特定するための情報が揃うことになり、戸籍の附票の写しを単独で本人確認資料として利用できるようになりました。
この改正は令和5年2月1日から施行され、本人確認手続きが簡素化されました。
本人確認書類として認められる主な書類
犯罪収益移転防止法における本人確認書類としては、以下のようなものが認められています:
顔写真付き公的書類(1点で可)
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 在留カード
- その他官公庁発行の顔写真付き証明書
顔写真なし公的書類(2点必要)
- 健康保険証
- 年金手帳
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 戸籍の附票の写し(今回の改正で単独利用可能に)
改正の法的根拠
今回の改正は、以下の法改正に基づいています:
情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律第2条の規定により住民基本台帳法が改正され、令和4年1月11日以降、戸籍の附票の記載事項に、新たに「出生の年月日」が追加されたことにより、戸籍の附票の写しのみで犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則上の本人確認書類の要件を満たすこととなったことを踏まえ、これまで戸籍の附票の写しについては戸籍の謄本又は抄本の添付が必要であったところ、戸籍の附票の写しのみで本人確認書類の一つとなることが規定されたものです。
本人確認が必要となる主な場面
司法書士の業務において、本人確認が必要となる主な場面には以下のようなものがあります:
- 不動産登記:売買、贈与、相続などによる所有権移転登記の申請時
- 会社設立・変更登記:法人の設立登記や役員変更登記の申請時
- 相続手続き:相続財産の名義変更や遺産分割協議書の作成時
- 成年後見関連:成年後見申立てや任意後見契約の締結時
- 各種契約書作成:金銭消費貸借契約書など重要な契約書の作成時
これらの場面では、取引の安全と本人確認のため、適切な本人確認書類の提示が求められます。戸籍の附票の写しが単独で利用できるようになったことで、特に住所変更履歴の証明が必要な場合に手続きが簡素化されます。

まとめ
令和5年2月1日付で施行された「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」の一部改正により、「戸籍の附票の写し」が単独で本人確認書類として利用できるようになりました。これは、行政手続きの簡素化・効率化を図る取り組みの一環です。
この変更により、特に不動産登記や法人登記などの手続きがよりスムーズになります。司法書士をはじめとする専門家は、この変更を理解し、クライアントに適切な案内を行うことが求められます。
本人確認は、取引の安全性確保や犯罪防止のために重要な手続きです。ご協力いただくことで、より安全で円滑な法律手続きが可能となります。ご不明な点がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本人確認書類や各種法律手続きに関するご相談
本人確認書類の準備や不動産登記、相続手続きなどに関するご質問やご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。専門的な知識と経験に基づき、最適なアドバイスを提供いたします。
司法書士・行政書士和田正俊事務所
住所:〒520-2134 滋賀県大津市瀬田5丁目33番4号
電話番号:077-574-7772
営業時間:9:00~17:00
定休日:日・土・祝
各種手続きガイドに関連する記事
氏名の署名は名字だけ、下の名前だけでもいいのでしょうか?
2025年6月6日
簡易裁判所でのウェブ会議利用の可能性とその利点
2025年6月6日