財産凍結法に基づく対象者拡大:大量破壊兵器関連計画等関係者との取引規制強化
令和5年6月1日、国家公安委員会告示第24号により、財産凍結法に基づく資産凍結措置等の対象となる者が新たに追加されました。この重要な法令遵守情報について、事業者の皆様が適切に対応できるよう、詳細を解説します。
本記事のポイント:
- 北朝鮮・イランの核・ミサイル開発関与者が新たに資産凍結対象に追加
- 財産凍結法と外為法は別個の規制として並行適用される
- 指定対象者との取引には両法律の遵守が必要
- 犯罪収益移転防止法に基づく顧客確認義務も並行して適用
- 最新の対象者リストは警察庁ホームページで確認可能
財産凍結法の概要と今回の改正
財産凍結法(正式名称:国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリスト及び大量破壊兵器関連計画等関係者の財産の凍結等に関する特別措置法)は、平成26年に制定され、令和4年に一部改正された法律です。
この法律は、国連安全保障理事会決議に基づき、国際テロリストや大量破壊兵器関連計画等に関与する個人・団体の財産を凍結し、これらの者との取引を規制することを目的としています。
令和5年6月1日付けの国家公安委員会告示第24号により、北朝鮮及びイランの核・ミサイル開発に関与または支援を提供している個人・団体が新たに指定され、資産凍結措置の対象となりました。
財産凍結法の主な規制内容
財産凍結法では、指定された国際テロリスト及び大量破壊兵器関連計画等関係者に対して、以下のような規制が適用されます:
- 指定された者が所持する一定の財産の仮領置
- 指定された者を相手方とする一定の取引の禁止
- 指定された者に対する支払い等の原則禁止
- 指定された者からの財産の受領の原則禁止
これらの規制に違反した場合、罰則が適用される可能性があります。
財産凍結法と他の法令との関係
外国為替及び外国貿易法との関係
財産凍結法に基づく規制は、外国為替及び外国貿易法(外為法)による規制とは別個に適用されます。したがって、財産凍結法の対象となる者と取引を行う場合には、両方の法律を遵守する必要があります。
例えば、外為法では資金移動や輸出入取引に関する規制がありますが、財産凍結法ではそれに加えて国内取引や財産の仮領置など、より広範な規制が適用されます。
犯罪収益移転防止法との関係
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)に基づき、金融機関や特定事業者は、顧客等との取引時に本人確認等を徹底して行う必要があります。
特に、財産凍結法の対象者との取引を防止するためにも、顧客の確認・取引のモニタリング等の措置を適切に実施することが重要です。この確認義務は、財産凍結法の対象者リストと照合することも含みます。
企業におけるコンプライアンス対応
企業や金融機関が財産凍結法を遵守するためには、以下のような対応が必要です:
最新リストの定期確認
警察庁のホームページで公表されている「公告大量破壊兵器関連計画等関係者」リストを定期的に確認し、自社の顧客や取引先との照合を行います。
取引スクリーニングの強化
新規および既存の取引先に対するスクリーニングプロセスを確立・強化し、指定対象者との取引を未然に防止する体制を整えます。
社内研修・啓発
関連部署の担当者に対して、財産凍結法の内容や遵守の重要性について定期的な研修を実施し、法令遵守の意識を高めます。
疑わしい取引の報告
指定対象者との取引が疑われる場合には、速やかに所管の都道府県公安委員会や警察に相談・報告する体制を整備します。
実務上の注意点
財産凍結法の対象となる者を特定する際には、以下の点に注意が必要です:
- 名前の表記揺れ(アルファベット表記の違いなど)に注意する
- 個人名だけでなく、関連企業や組織名も確認する
- 通常と異なる取引パターンや、第三者を介した迂回取引に警戒する
- リストの更新は予告なく行われる場合があるため、定期的な確認が不可欠
- 疑義がある場合は、安易に取引を進めず、専門家や当局に相談する
まとめ
令和5年6月1日付けで北朝鮮及びイランの核・ミサイル開発関与者が新たに財産凍結法の対象に追加されました。企業や金融機関は、この法律と外為法、犯罪収益移転防止法を並行して遵守する必要があります。
対象者リストは定期的に更新されるため、最新情報を常に確認し、適切なコンプライアンス体制を構築することが重要です。不明点や疑問がある場合は、各都道府県公安委員会や警察にお問い合わせください。
詳細な情報や最新の対象者リストについては、警察庁ホームページの国際テロリスト等財産凍結法関係ページでご確認いただけます。
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